WSET Diploma 南オーストラリアの赤系品種のスタイルの気候的要因(バロッサ・ヴァレー、イーデン・ヴァレー、マクラーレン・ヴェール)
こんにちは、Aoyama Wine Baseのフィゴーニです。
WSETのディプロマを取りっぱなしで、復習する機会を作るべく、ブログにちょこちょこ世界のワイン産地について書こうと思います。
内容は結構ドライですが、着眼点などはWSETを勉強されている方のご参考になるかと思います。ご興味のある方は読んでみてください。
緯度は34~35度くらい⇨
緯度が比較的低い産地という事は、高緯度な産地に比べ、太陽エネルギーが強く温度も高い。そのため、一般的には、光合成が促進され糖度が上がりやすくなる。また、太陽光がブドウに直接当たる事で、果皮が分厚くなる。
これがワインのスタイルにどう影響するか?
赤ブドウだとタンニンや色素が多く生成されるため、ワインの色合いは濃く、タンニンも高くなりやすい。ただし、タンニンは重合(タンニン同士が結合)するため、舌あたりは柔らかく収斂性を感じにくい傾向がある。また、糖度が高いとアルコールも高くなるため、一般的には高アルコールでフルボディ、寒暖差が少ない場合、酸が代謝され、酸味は低いもしくは中程度になる。
バロッサ・ヴァレー vs イーデン・ヴァレー
バロッサ・ヴァレーはイーデン・ヴァレーと比較して標高が低く、熱が篭りやすい渓谷になっているため、ワインは高アルコールで酸が低くなりやすい。そのため、晩熟の品種(例 グルナッシュ)が向いているが、世界的にはシラーが最も有名で最も"重要"な品種と言える。生育期間の降水量は160mmと低く(対してボルドーなど海洋性気候は年間950mm)、バロッサ・ヴァレーの北の方(Northern Valley)の保水性が良い土壌に植えられている古木を除き、南のエリアでは排水性が良いため、灌漑が基本的に必要になる。
そして、暑く乾燥してるため、ブドウの樹、葡萄の実、土壌からの蒸散量(水分の蒸発)が増える。結果、ブドウの実は小さく、果皮の割合が果汁に対して相対的に高くなるため、タンニン分が増え、色調も濃くなる傾向がある。また、酸が代謝されるため、一般的には収穫を早めない限り、酸は低くなる傾向がある。味わいは、フェノールの成熟(タンニンとフレーバー)を待つために収穫を遅らせるため、高アルコールかつ、過熟したプルーン、ブラックベリーのコンポートのような味わいになる傾向がある。
これに対して、イーデン・ヴァレーはバロッサの東の標高が高く(600m)風が強い、雨も比較的多い(250mm)場所に位置するためバロッサに比べると冷涼な気候になる。そのため、シラーやグルナッシュはよりエレガントでフレッシュなニュアンスを感じる。ただし、低緯度と高標高による紫外線により、フランスのロールなどオールド・ワールドのシラーに比べると、完熟した果実のニュアンスは強く感じられる。ただ、過熟感はなく、フレッシュなプラムやブラックベリーなどの果実味、酸は比較的高くフレッシュ、ミディアムボディ、糖度もバロッサに比べると上がりにくく、アルコールも中程度のものが多い。
マクラーレン・ヴェール
アドレードの街の南に位置し、暑く乾燥した地中海性気候のため(雨量は200mm程)、ブドウは完熟もしくは過熟になる。バロッサと同様にシラーズの色調は濃く、フルボディ、高アルコール、完熟〜過熟した黒系果実が一般的に多くなり、キャノピーマネジメントを怠ると、焼けたニュアンスを感じる事がある。
また、マクラーレン・ヴェールは平坦な場所が多く、特に南部は表土が深く肥沃な土壌で、かつ灌漑用の水も潤沢にあるため(近年は水不足に陥っているが。。。)、畝間を広げ機械が入りやすいように畑を設計し、高収量、大量生産向けのワインが作られる事が多く、マルチ・リージョナル・ブレンドに使用される事も多い。
ただし、北の方は土壌が痩せており、グルナッシュやシラーズの古木なども多く、高品質なブドウが近年作られるようになっている。また、北は土壌の粘土の割合が高いため、無感慨(特に古木)の樹もたくさん植えられ、葡萄の収量も低くなりやすい事が多いため、凝縮したブドウができる。最近は、酸の保持の観点(グルナッシュは酸は低い品種ですし、シラーも過熟になると酸が落ちやすい)からフィアーノやサンジョベーゼ(晩熟な上に酸が保たれやすい)も植えられ始めている。
では、次回をお楽しみくださーい。